5月12日、雨、透明な壁。

透明な壁。
透明な壁について考える。
暗黙の了解で、私の前に用意されてきた透明な見えない壁。
それは、床。それは、天井。それは、何枚もの扉をくぐり、それは、カーテン。
それは、ソファ。
踏み越えることを許されない結界のようなもの。

許可が下りれば、透明な壁は一歩前進する。
許可が無ければ透明な壁は歴然と立ちはだかる。

(破ることは許されない。破れば与えられたその場所にさえ居れなくなってしまうから。
結界の外に居るしかないのである。
せめてそこには居たいから。与えられた最前線にはいたいから。
だけれど、向こうの住人にはこちらが結界の内なのだ。
守られているのは私、なのだ。
向こうの住人はこちらに侵入できないから、私は舞台裏という安全地帯に居ることになる。
だから、向こうの住人にとっては結界の内、だけど、私にとっては結界の外。
私は、私にとっての結界の内に行きたいのに、行くことが出来ない。
だけれど、どちらも出入りのできる人種もいる。)

そこから手足を伸ばしてくる。
透明な壁を貫いて触手を伸ばすがごとく。に見える。奥に続く、風景。
透明な壁越しの、風景。