西会津国際芸術村、滞在記:後編

西会津国際芸術村、滞在記:後編


滞在も残り数日となって、
凍った窓ガラスが、ライトに照らされてきらきらと輝く夜があって、
それは普段見慣れた岩絵の具の質感と非常に近いものがあって、
思うところがあり
水晶末を紙の上に撒いてみる事にします。
それ自体は上手くいきませんでした。が次に、
もう少し青みがかった荒い絵の具を画面上に置いてみた所、
そしてそれが乾いた時にも、
完璧とは言わないまでもしっくり来るものがありました。

水晶末にしろ、その岩絵の具にしろ
濡れて画面上にあるときの質感や色目の方がイメージ(水浸しの廊下が寒さで凍って、廊下も、
廊下の木目を吸い上げた作品も共に朝凍り付いている)と重なる点が多いのですが、
乾いてもそうイメージと遠ざからないというか、

近作をより現実に置き換えたような、
なぜ近作を作り続けているのか、
近作はどういった事なのかその構成を別の形で見れた気がして、
最後に出来た、その木目の写し取られた和紙の上に青みがかった氷を意図した岩絵の具が部分的に
振りかぶったものは、
私に取って意義のあるものでした。



人間のスイッチを切って、風景に佇んでいる時の人工も自然も無い
とけ込んだ感じを出せるのが目標だと、
いきなり、シャーマニックな事を言い出すと驚かれるかもしれませんが、
この西会津という土地は山岳宗教の残る、宗教的な街でもあると教えられて
少し安心出来るところもありました。
緑が深く、自然の自浄作用が上回るから、下水設備が無く、
洗剤も何も水場から流れ出た汚水はそのまま川に流れ出ても平気な土地柄と聞いて身を隠したい気持になりつつ、
自然の懐の深さを感じました。


周りの生態系に身を添わせて生きる事。


自分のバイオリズムを感じて生きるという事。



滞在中に作った30枚余りの作品は一旦、未完、完成問わず持って帰りますが、

再び来訪し私の手のみならず、協力者を募ってもっと大量に作れやしないか、
その上で構成を考えて校舎中に散りばめられはしないかと、
渋い作品なりにも無数にあれば、浮かび上がる光景があるんではないか、と
夢が広がりました。
その実現の為にも一度帰り思案する事にしますが、
また、近いうちに来るという思いを託して
一番のお気に入りを校舎に一枚、忍ばせて帰る事にしました。

これで終わりにしない為に、これからどうするか、ゆるゆるとヒントをもらった様な
心地がします。

ゆっくりと、じっくりと向き合える様な場所や人たちとの出会いでしたので、
また別の形でも繋げられる様な予感もします。と、
ここまでまとめるのにも随分と時間がかかってしまいましたが、

会津でお土産に買ってきた薔薇から採った蜂蜜を混ぜたホットミルクを飲み
身体を温めつつ、
思い出しつつ、
ゆっくり、じっくり温めて ずるっと滑り出すのを、楽しみに待とうと思います。


吉田沙織 2014、3、19
(2014、1、20−1、30滞在)